平成12年10月7日 (土) 13:30〜17:30
東京芸術大学 大学美術館 取手館
全国から187件のエントリーがあり、総数131点のプロポーザルが提出され、
東京芸術大学美術館取手館に展示された。6件のアートプロジェクトを
公募により選出するための選考会が、展示されたプロポーザルを前にして、
観客に公開する形で行われた。先端芸術表現科教官3名の他に、
広い分野から6名のゲスト選考委員が加わり、一般投票結果もその過程において
反映された。
(参加作家は、招待作家3名を加え、合計9組となった)
選考委員
- ゲスト選考委員
- 磯崎新 - 建築家.東京芸術大学大学美術館客員教授
伊藤俊治 - 美術史家. 多摩美術大学教授
今福龍太 - 文化人類学者. 札幌大学教授
鬼澤恭子 - 取手市教育委員会教育長
鈴木実 - 彫刻家. 郷土作家の会会長
根本凡 - 前取手アートプロジェクト実行委員長
- 先端芸術表現科教授
- 川俣正
木幡和枝
藤幡正樹
選考結果
- 入選
-
Jannie Regnerus "The whispering house"
田中大造・山嵜一也 "TIME TUNNEL"
島田忠幸 "時の堆積"
西島治樹 "REmain in Light"
杉浦久子・杉浦友哉 "sympathetic rabbit"
北川貴好 "ウチを開く"
選考過程
冒頭に、川俣正取手アートプロジェクト実行委員長より、本年のテーマである
「家・郊外住宅」についての説明と、昨年をふまえて、今回をより特色のある
ものにしたい、自転車に乗って鑑賞できる現実的なプロジェクトを求めている
という旨の挨拶が行われた。各委員紹介の後、選考手順について検討され、
9名各自が会場を回り審査を行った。選考に先立ち、意見の交換があった。
(以下敬省略)
- 「何をしたいのか、内容がはっきり解らないものが多い。
プロポーザルに対する認識の問題。」(川俣・磯崎)
- 「コンセプトであるはずのものがそうでないために、非常に言葉が
曖昧になっている。」(藤幡)
- 「まず簡潔なもの、そして物理的に何をやるかのセンスや美しさを見ていった。
また、タイトルが過小評価されている。」(今福)
- 「まちなかの作品を見てまわる時に、自分のなかで、ランドスケープが
描けそうなものを挙げた。」(伊藤)
- 「家そのものが何かと問う作品を選んだような気がする。」(鈴木)
- 「物件の周囲や地形、そういうものの関連でプロポーザルを見ていった。」
(根本)
- 「市民が喜べるもの、楽しめるものに重点を置いてみた。」(鬼澤)
- 「今回は特に、家の『中』と『外』といった関係を重視した。」(木幡)
第1審として、選考査員は、推薦するプロポーザル6点を記入して提出した。
それに、一般投票による上位5名を加えた総数40点を再度、全員で見て回り、
それぞれ推薦理由を述べあった。
第2審では、選考委員による3点の記名投票の結果、選考枠6点のうちのまず4点
の入選が確定した。
-
Jannie Regnerus "The whispering house"
獲得票の最も多かったプロポーザル。
「完成したときに、洗練された作品になるのでは。」(磯崎)
「こういう行為自体がちょっとした仕草なんだけど、その仕草が
いろんな事を喚起していく。そのところは面白い。
また、コミュニケーションを含めて、取手のそういった家に何か聴こうと
している。それは外国人だからかもしれないが、そんなイメージをもつ。」
(川俣)
「視覚を遮られたところで、体全体を耳に変換していくという仕組みを、
上手に実現しようとしている。」(今福)
「場の記憶の引き出し方は、他と比べて直接的でなく、うまいと思う。」(藤幡)
-
田中大造・山嵜一也 "TIME TUNNEL"
「バス通りからこのアートプロジェクトを行っていることがアピールできるし、
アイデアも面白い。」(鬼澤)
「家に入っていながら、入っていない、路地裏をつくっている感じがして
面白い。」(川俣)
「非常に明快。」(鈴木)
「拡幅工事が予定されている地形をうまく使っている。」
といった意見があがった。
- 島田忠幸 "時の堆積"
「まわりの情報をモデル化し、結晶化させる仕組みを持っている。
アトラクティブで面白い。」(伊藤)
「壊せないという家への想いがあるのでしょうか。そんな想いが、
この作品に込められている気がした。それに、プロポーザルがとても
分かりやすかった。」(鬼澤)
- 西島治樹 "REmain in Light"
「仮想の昆虫採集をまちの中で行い、それが家へと展開していく。
郊外のまちの仮想性、例えば、取手の町にいるんだけれど、東京で
仕事をしていて、意識は東京にある。頭のなかと自分のフィジカルな場所の
乖離のようなものが、新しいテクノロジーによって見えてくる。」(藤幡)
「郊外性に対する記憶喚起の行為として、そしてなによりも目に見えない
ものが可視化される面白さがある。」(今福)
残り2点の選出にあたり、それぞれが推薦するプロポーザルを巡って、
熱い議論がかわされた。最終的に第3審として、残り2点を選ぶための投票が
行われ、その結果、入選作品全6点が決定した。
-
杉浦久子・杉浦友哉 "sympathetic rabbit"
「対岸からレーザーでシューティングするという発想は、斬新。
全体のなかで、ユーモアのある作品もあっていい。」(藤幡)
「利根川と、それを挟んだ両岸の地を使っている面白さがある。」(鈴木)
ここで、鬼沢選考委員より、夜間の限定された時間にのみ行われるという
展示条件について、市民を代弁する立場から疑問の声があがり、
他の選考委員との間で白熱した論議が交わされた。
それを受けて、「それぞれが守らなければいけないことは微妙にずれている、
だからこそ一緒に行う意味がある。議論になった方がいい。」(木幡)、
という声もあがった。
- 北川貴好 "ウチを開く"
「単純な発想だけど、同じ様な家が並ぶ中での対比は面白い。
作業はかなり大変だと思われるが、実現性は高い。その穴を通して、
家の中からもれる光も見てみたい。」(川俣)
また、惜しくも補欠となったのは、
Metaphor 8 "Site 2-2-17"、
梅根常三郎 "カムフラージュ"、
モリタカシ "life in the balloon"
の3点であった。